感情のあるビジネス行動に成長実感を得る、アート構造を持つ組織開発

アート構造

例えば受験生が、「きっと合格できないだろう」と思い悩むと勉強に集中できず、結果、“サクラチル”の報を受けることがあります。たとえ根拠のない思い込みであったとしても、信念や期待は行動や態度に影響を与え、結果を左右することがあります。

科学は、わかっている範囲でのみで有効です。しかしビジネスは、現代をVUCAと評するように、わからないことに囲まれています。社会や人間関係を完全に理解することはできず、また制度などが完全性を持つこともあり得ません。したがってビジネスは、必ずしも“府に落ちる”わけではないということを前提に進めるしかないのです。

しかし、「ビジネス行動は、理解できないことを前提にしている」と捉えると、そこには新たな理解や視点を開く可能性があることに気づくことができます。

「酒の価値は、酔わせてくれることにある」という考えは“完全”ではない。このことに気づいたからこそ、ソバーキュリアスという市場が生まれたのではないでしょうか。メジャラブルなゴールだけを追い求めていくことが、科学に洗脳された狭い世界に閉じ籠ること(イノベーションの阻害要因)になることを示した例だと思います。

試験勉強では、一単元づつ習得していくことが、期する成果に繋がっていくと信じることができます。なぜなら試験は、出題範囲と基準が完全かつ明確だからです。一方で、前提が異なるビジネスでは、ゴールを“合否”のような論理解に置くことができません。無理に置こうとするなら、ディベートのように納得の無い結論しか定めることができないでしょう。おそらくビジネス行動に必要なのは、「目標に1歩近づいた」という達成感だと思われます。しかも、そこからの道程は、そこで新たに設定される“次の成長課題”に向かうものとなるはずです。ゴールに到達していないということは、「できていない」(ダメな)ことではなく、「新たな理解や視点を開かれた」ということになるのだと思うのです。

ビジネスが前提にしている不完全性は、おそらく完全を求める対象(科学の対象)にはならないでしょう。それは、突き詰めれば「仕事=問題解決」という概念から逸脱します。しかしこのことは、ビジネスがAIではなく“人”の行うものであることの証になっていると見ることができると思います。すなわち、感情が行動を左右することがビジネスには必要であり、このようなアートな構造を持つように組織は開発されることが必要だということではないでしょうか。だからこそビジネス行動は、組織ならびに個人に成長実感をもたらすのだと思うのです。そして、そこにこそ、ビジネスをマネーゲームに貶めない、本来の価値があるのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました